会社員のまま起業するメリット4選|起業方法も7段階で解説

会社員が起業するとなると「脱サラ」を想像する方も多いかと思います。しかし会社員の安定性を捨てて起業するのは不安という方もいらっしゃるでしょう。

一方、「会社員を続けながら起業する」という選択肢があり、しかも業種ややり方をきちんと選べば、そこまで難易度は高くないということをご存知でしたでしょうか?

終身雇用制度の崩壊、副業を容認する企業の増加などを踏まえると、会社員のまま自分の事業を立ち上げ、収入源を増やすのは理想的な選択です。本記事では起業経験がない方でも成功できる方法やおすすめの業種を紹介しますので、ぜひ最後までご覧になってくださいね。

会社員起業のメリット4つ

会社員 起業 メリット

市場や顧客に受け入れられる斬新なアイデアを元に綿密な事業計画を立て、十分な事業資金も準備して会社員起業に臨んでも、必ず成功する保障はありません。

一方、会社員起業で万が一事業が失敗しても、会社員としての収入が得られるので起業の失敗リスクが軽減されます。こちらでは、会社員が起業する主なメリットについて4点を解説します。

本業収入が確保されて倒産リスクが軽減

民間の調査では企業生存率は5年後に82%、10年後は70%、さらに22年後は50%となっており、事業経緯とともに倒産リスクが高まっていく実態を示しています。

中小企業白書2011年版の概要
中小企業白書2011年版の概要

ところが、会社員起業では本業収入が確保されるため、生活不安に悩むリスクは軽減できます。

どんな起業をする際にも当面の生活確保は最も重要なので、これは会社員起業のメリットです。

講師 中村司
人生100年時代、倒産はせずとも退職は余儀なくされます。そのときに起業スキルがあるか、雇われるしかないか…その時のことを想像してみてください。
この観点から言うと、まだ本業収入があるときに会社員起業をするというのは、現実的にスマートな選択だと言えるのです。

本業を活かして販路・資金繰りなどの課題を解決できる

日本政策金融公庫の調査では、起業に際して苦労したポイントとして、次の項目を挙げています。

  • 顧客・販路の開拓(47.0%)
  • 資金繰り(46.9%)
  • 税務・財務・法務関連の知識不足(30.2%)
  • 従業員の確保(18.4%)
  • 仕入先・外注先の確保(14.1%)

顧客・販路の開拓と資金繰りが、起業の重要課題です。

これらの課題が解決できれば、会社員起業を成功させることが可能となります。顧客の開拓や資金調達は、会社員のままでも対応が可能どころか、会社員の立場を利用した方が有利に働く場合があります。会社員は組織としての信用を得られるため、資金調達面でも有利です。

また、会社員として仕事をしながら、現在携わっている仕事に関連する顧客や関係者とのパイプを活用して、起業することが可能です。

経営資源や人脈を活用できる

会社員としての日常業務をこなしながら、起業に必要な経営資源や顧客・取引先等の人脈を活用できるため、起業後もこうした資産を有効活用できます。

中小企業白書によれば、起業にあたって選択した事業分野については、多くの起業家が次の項目を選択・回答しています。

中小企業白書
2011年版 中小企業白書

会社員であることは、事業に必要となる経営資源や顧客・販路の確保に有効であり、会社員のまま起業しても大きなメリットとなります。

起業に役立つリソースを見つけやすい

会社員は、日ごろの業務を通じて、起業に結びつくアイデアや、起業したい仕事を発見できる機会に恵まれ、起業パートナーとの出会いの機会も多く得られます。

また、会社員で培った人脈を通じて起業につながるイベントなどに接する機会も得られます。

さらに、会社員はある程度の資金や経験、人脈が形成されているので、起業時に資金面・人材面での参入障壁が低く抑えられます。

会社員起業の7ステップ

会社員 起業 方法

会社員起業メリットを確認したところで、いよいよ会社員起業の7ステップについて解説します。

アイデアを考える

会社員起業にあたって起業アイデアは必要です。起業で何をするのかが決まらなくては、ビジネスにはなりません。

また、自分がやりたいことや仕事として取り組みたいことが、そのまま会社員起業につながるとは限りません。

常日頃、会社員として起業アイデアを考え、市場や顧客に受け入れられる魅力や競合優位性があるのか、検討することが大切です。

自己分析を行う

会社員起業をする際、知識や技術、実績やノウハウ、人脈などの強みを分析することが大切です。

この作業を通じて、事業の成功に直結する、市場ニーズに合致した商品・サービスの開発につなげることができます。

競合分析を通じて、市場・顧客ニーズをベースに、ライバル企業に勝てるビジネスモデルを提案することが事業の成否に直結します。

分析手法の解説:4P分析と4C分析

有名な分析手法としての「4P分析」と「4C分析」について参考までに解説します。

「4P」とは、次の4つのPを意味しています。

起業 会社員 4p分析 自己分析

企業側の視点に立った考え方で、どの製品をいくらで、どの流通経路で、どう販促するかを分析する手法です。

一方、「4C」は次のとおりです。

会社員 起業 4c 自己分析

顧客側の視点に立ち、顧客が受ける価値や出費する費用、顧客が望む情報や、顧客の声に応えているかといった点から分析します。

講師 菅野一勢
起業アイデアを感覚的に作るのもいいですが、フレームワークを使うと効率的かつ質の高いアイデアを作ることができますよ!

事業計画を立てる

会社員起業のアイデアに基づき、事業計画を立案します。

経験や知識、スキルなどを活かせる市場はどこか、どの顧客をターゲットとすべきか、競合優位性のある商品やサービスは何か、というビジネスモデルを軸に進めていきます。

経営資源とターゲット顧客に加え、ライバル企業との競争を視野に事業を構想し、コア事業を遂行する組織の仕組みや、制度を構築していくことが重要です。

ただし、会社員起業の前に事業計画を綿密すぎるほど詳細に立てる必要はありません。なぜなら、実際に起業した後に状況や想定が変化する可能性は大きいからです。

アントレカレッジではスピード感を重視した起業を重視していますが、これはモチベーションの維持ビジネスチャンスの早期獲得など様々なメリットがあります。

講師 中村司
綿密に計画を立てるよりも、とりあえず起業してしまう方が市場が求めているものを手っ取り早く掴めるんです。
「起業にはしっかりした計画が大事」と思っている方にこそ、こちらの記事をご一読いただきたいですね。

実現可能性を探る

事業計画の策定に伴い、会社員起業の初期費用がどの程度必要で、運転資金は毎月いくらかかるかについて明確にする必要があります。

支出と同様、売上金額の予測も行い、1年後の事業収支をあらかじめ想定します。

想定した収支が目標に達するレベルであれば、立案したビジネスモデルは実施可能という判断が可能となります。

会社員起業のスケジュールを明確にする

事業計画と収支計画に基づき、具体的な会社員起業のスケジュールを策定します。

必要となる施設・設備や、人材の採用・確保、また資金調達などについて、それぞれいつ入手できるのかといった予定を確認しておくことが必要です。

人材育成に必要な教育・訓練の期間や、事業分野によって必要となる許認可の審査期間なども考慮します。

会社員起業にあたって準備すべき項目は多いので、事前に整理し、スケジュールを明確にすることがポイントです。

事業可能な状況を確保する

会社員起業をする場合、起業に充てる時間は就業や通勤と重ならない状況に限定されます。

このため、会社員として対応可能な範囲を見定め、計画的かつ効率的に遂行できるよう調整することが大切です。

全て一人で対応するのは不可能ですから、経理やIT関連など、外部に任せられる部分は可能な限りアウトソーシングを活用する工夫も必要です。

独立の場合は円満退職へ向けて準備する

会社員起業が成功する見込みが立てば、事業を成長させるため、脱サラして経営に専念することが必要となります。

その際には、どこかで退職することとなりますが、これまで会社員の立場を活用して事業を育成した経緯からも、所属する会社に一切迷惑をかけることのないよう配慮することが大切です。

上司や同僚などにも状況を説明して理解を得て、退職後も支援が得られるような状況を構築することがポイントです。

会社員起業の注意点4つ

会社員 起業 注意点

次に会社員起業をする際の注意点を4点ご紹介します。

スモールステップで始める

会社員起業では小さく始めることが大切です。会社員の立場を最大限に利用して活動するため、取引先や職場の上司・同僚などに対して配慮しましょう。

さらに、会社員と起業家という「二足のわらじ」で活動するため、家族や近親者の十分な理解と支援を得られるよう心がけましょう。

なお、所属企業が副業禁止の場合は、あくまで「会社員起業の準備」に留めておくことです。

小資金で始める

会社員起業をする際は、小資金で始めましょう。本業の収益を全て使ってしまうような会社員起業は、本業にも支障をきたす恐れがあるからです。

会社員起業のメリットは副業が失敗しても本業からの収入が保証されているという点です。会社員起業に本腰を入れすぎて、本業を失ってしまうのはもったいないです。

社会保険の負担額が大きくなる

会社員のまま法人起業(会社設立)をすると、社会保険の負担額が増加してしまいます。

現在は、社会保険料をお勤めの会社とご自身で折半して支払っていますが、法人化した場合はそちらの社会保険料も払う必要があるからです。

会社設立後、社会保険への加入は義務であり、組織化するとともに社会保険料の額は増加していきます。この点も意識して個人事業主として始めるのか、法人化するのかを考えましょう。

税金の支払いが増える

会社員のままでも、法人起業したら6つの税金支払い義務が発生します。

法人が支払う税金

  1. 法人税
  2. 法人住民税
  3. 法人事業税
  4. 消費税
  5. 地方法人特別税
  6. 固定資産税

これらも一種の会社維持費のため、計画的に出費額を計算しておく必要があります。

会社員のまま起業するのにおすすめの副業アイデア

会社員 起業 アイデア

次に会社員のまま起業するのにおすすめの副業アイデアをご紹介します。

いきなり独立するのではなく、隙間時間に費用をほとんどかけずに始められる起業アイデアを厳選したので、ぜひ会社員のまま起業する方は参考にしてください。

物販事業

物販事業とは、安価で商品を仕入れて他所で仕入れ値よりも高額で販売する起業アイデアです。

有名どころでは、中国版Amazonとも言われる「アリババ」で商品を購入して輸入し、それをAmazonで販売する方法があります。他にもリサイクルショップで相場以下で売られている商品を購入して、ネット上で出品するという手もあります。

売れる商品と仕入れ先が分かれば安定して収益を得ることができますし、外注化を図ることで労働時間の削減も可能です。

Web系技術職(ライター・デザイナー等)

ライターやデザイナー、プログラマーやコーダーなどのスキルがあるならWeb系技術職がおすすめです。

オンラインで完結する仕事なので時間や場所にとらわれず、昼休みや通勤時間、帰宅後などの隙間時間にいつでも副業として取り組むことが可能です。

また、クラウドソーシングサービスを利用すれば仕事がすぐに見つかることもメリットの1つです。すぐにでも副収入を得たいという方は、Web系技術職での会社員起業に取り組んでみましょう。

レンタルサービス

車や空き部屋など、普段使っていないリソースがあるなら、それらをレンタルして収益を得ることができます。

例えば、個人間車レンタルサービスでは「Anyca(エニカ)」、空きスペースレンタルは「モノオク」、本格的な民泊事業なら「Airbnb」が有名です。自分が普段使っていないリソースに「レンタル」という文字をつけ、Googleで検索すると意外なレンタルマッチングサイトが出てくるかもしれません。

レンタルサービスの魅力は、使っていないリソースで収益を発生させられるという点です。そのまま眠らせたままの状態であれば、貸し出しをしてみてもいいでしょう。強い需要があるなら、個別の事業として起業することもできます。

代行サービス

例えば、配車サービスの「Uber」や出張料理サービスの「シェアダイン」、家事代行の「クラッシーコンシェルジュ」など、幅広く代行プラットフォームが存在します。

代行サービスは「誰かの代わりに何かをする」ことが本質なので、代行の需要があればプラットフォームを作って起業することもできます。管理者としてサービス料などを収益にすることが可能です。

近年は高齢者向けの代行業が注目されており、介護支援の「ベアーズ」や夜間見守り介助サービスの「ダスキンライフケア」など、市場は拡大しています。

まとめ

会社員起業には大きなメリットがある一方、様々な課題や注意点もあります。

しかし、将来の成功へ向けて、夢を抱きながら会社員として起業することには大きな意義があります。

この記事を読んで、会社員としての起業へのヒントとしていただければ幸いです。