居酒屋を開業したい方へ|手順・資金・資格・成功のコツを解説

居酒屋の開業方法を知りたいですか?

コロナ禍で飲食店は苦境に立たされる中、居酒屋の成功率は40%と言われている通り、4割の方は成功しています。

しかし成功のコツや正しい起業手順などを知らなければ、成功率はガタンと落ちてしまいます。

本記事では、これから居酒屋を開業しようというあなたに、必要な手順・資金・資格などを解説します。

居酒屋経営以外に起業したい方向けのガイド記事もぜひお読みください。

目次

居酒屋経営の成功率は40%?

居酒屋を開業して成功する確率は決して高くありません。

飲食店.COM(株式会社シンクロ・フード)の調査によれば、居酒屋の廃業率は以下のようになっています。

・廃業した居酒屋の内、1年以内に廃業したケースが約30%
・3年以内の廃業したケースが約60%

つまり、開業してから4年以上経営が続く居酒屋は約40%しかない計算です。

更に、廃業した居酒屋の中で11年以上続いていたケースはわずか10%にも届きません。

その調査結果からも、居酒屋を経営するのは決して簡単ではないと言えます。

居酒屋を開業するメリット・デメリット

一人で独立し、居酒屋を開業することには様々メリットがあります。一方でリスク面などを考えると、デメリットも存在することも事実です。

居酒屋を開業するメリット3選

まずは居酒屋を開業するメリットとして以下3点を紹介します。

・各商品の利益率が高い
・競合店との差別化を行いやすい
・参入しやすい

各商品の利益率が高い

居酒屋経営に係る大きな特徴の1つが「各商品の利益率が高い」ことです。

例えば、大瓶ビールの仕入れ値は安価なもので250円で平均300円程度です。これを居酒屋では500〜600円程度で提供することになるため、利益率は50%程度になることは明らかです。

飲食業界にはFLコスト(材料費と人件費を合わせたもの)という概念があり、一概に仕入れ原価だけで判断することはできませんが、各商品の利益率が高いことが分かります。

利益率が高いということは、それだけ儲けに繋がりやすいと言えます。

競合店との差別化を行いやすい

一概に居酒屋と言っても、取扱うお酒や料理のジャンルなど多岐に渡ります。つまり、コンセプトも多種多様です。

そのため、他の飲食業とは異なり、差別化戦略が取りやすいというメリットがあります。

また、コンセプトの差別化を行いやすいということは、競合他社との価格競争にもなりにくいというメリットにも繋がります。

参入しやすい

居酒屋の開業をする際に難易度の高い資格を取得する必要ありません。年齢や経歴に関係なく、誰でもしっかりと準備を行うことで開業することができるのです。

誰もが平等に成功のチャンスがある点も居酒屋経営のメリットです。

居酒屋を開業するデメリット3選

一方で、居酒屋経営ではいくつかのデメリットもあります。居酒屋開業に関するデメリットとして、下記3点を解説します。

・身体的負担が大きい
・ライバルが多い
・収入が安定しない

身体的負担が大きい

居酒屋は深夜帯まで営業することが多いです。そのため、毎日の帰宅時間が、日が変わった後となることも頻繁にあります。

飲食業は営業日も多いため、身体を休める時間が取れないことが多いです。他の業種と比べて身体的負担が多い傾向にあるため、留意する必要があります。

ライバルが多い

メリットの項目で「参入しやすい」と解説しましたが、これがデメリットに働くこともあります。

参入しやすいがために、ライバルが非常に多い業界なのです。コンセプトの違いによってある程度の住み分けはできますが、うまくポジショニングをしなければなりません。

収入が安定しない

これは多くの飲食店に共通しますが、収入を安定させるのは簡単ではありません。

具体的には、新型コロナウイルスの影響によって多くの居酒屋が廃業に追い込まれています。他にも、メディアに取り上げられた結果大きく繁盛したが、流行りが移り変わって客足が遠のいたという例もあります。

そのため、開業の際は、収入に波があるものと理解した上で経営することが大切です。

居酒屋開業までの7手順

それでは、実際に居酒屋を開業するためにはどのようなステップを踏めば良いのでしょうか。

ここでは、居酒屋の開業までに行う必要がある準備として、以下の7つを順番に解説します。

・居酒屋のコンセプトを決定する
・物件を決める
・資金調達を行う
・メニューを考案する
・お店の宣伝を行う
・シミュレーションを行う
・開業手続きを行う

1. 居酒屋のコンセプトを決定する

居酒屋を開業したいと考えたら、まずはコンセプトの決定から行いましょう。

具体的には以下のような点です。

・ターゲットは誰か
・何を提供するのか
・どのようにして提供するのか

これらが今後の活動の基盤となるため、しっかりと考えましょう。

2. 物件を決める

コンセプトを決定したら、そのコンセプトにマッチした物件を探しましょう。物件も単に家賃の目安だけで決めてはいけません。

必ずその付近に住んでいる人の傾向や同業者の傾向を確認しましょう。

もし住民の傾向が自身のコンセプトにマッチしていない場合には避けた方が良いでしょう。

3. 資金調達を行う

居酒屋を開業するには、ある程度の初期費用が必要です。

借入なしで運営できるのが理想ですが、中々難しいという方もいるでしょう。資金調達の手段には主に以下の3つがあります。

・融資を受ける
・助成金や補助金を活用する
・クラウドファンディングで支援を募る

3-1. 融資を受ける

資金調達方法で一番メジャーな方法は、融資を受けることです。具体的には、日本政策金融公庫の創業融資などがあります。

3-2. 助成金や補助金を活用する

融資以外にも、助成金や補助金を活用するという手段もあります。

経済産業省や地方自治体が行っている場合が多いです。返済義務が無い場合も多いため、各種要件に該当するのであれば金銭的負担は減少します。

しかし、助成金や補助金はキャッシュバックが基本となるため、開業時における費用はこちらで準備する必要があります。

3-3. クラウドファンディングで支援を募る

最近増えているのが、クラウドファンディングでの資金調達です。

プロジェクトに共感さえ得ることができれば、個人であっても多額の資金を募ることができます。

一方で、成功が確約されていない上に、近況報告や支援者へのリターンなどの手続きも多いため、メリットとデメリットを確認した上で活用しましょう。

4. メニューを考案する

メニューの考案も、開業準備において非常に重要なポイントです。提供価格や、使用する材料、見込みの粗利率等も一緒に算出します。

この時に、コンセプトから外れたメニューではないかを必ず確認しましょう。

5. お店の宣伝を行う

お店の宣伝は必ず開業前から行いましょう。ホームページやSNSなどを用いた、インターネット上での宣伝やチラシの配布などが挙げられます。

大切なことは、どの方法が一番ターゲット層に対して宣伝効果があるかを理解することです。

6. シミュレーションを行う

メニューや店舗の目途が付いたら必ずシミュレーションを行いましょう。見込みの客数や客単価を算出して、本当に利益が出るのか、無駄はないかを確認します。

最初のシミュレーションで改善点がない方はほぼいません。問題点を見つけ改善をする作業を繰り返しましょう。

7. 開業手続きを行う

上記したことは開業前に最低限行うことです。綿密に準備をした上で、開業日に合わせて開業手続きを行います。

具体的な開業手続きについては後述します。

居酒屋の経営でよくある失敗例5選

実は経営に失敗する人にはいくつかの共通点があります。事業を存続させるには、周りと同じ失敗をしてはいけません。

ここで、居酒屋の経営においてよくある失敗例として以下5つを紹介するため、参考にしてください。

・事業計画が甘い
・原価率が高すぎて利益が出ない
・立地が悪く客入りが悪い
・ニーズに応えられていない
・最初から大規模な投資をしている

1. 事業計画が甘い

開業前には当然、見込み利益の計算や事業の将来像を計算・計画します。しかしその計算や、計画が甘いことによって、予定よりも売上が立たないということがあります。

もちろん、実際に経営を行わないと分からない部分は多々あります。それでも可能なだけ、予測と実測が一致するように、原価率や固定費、売上高などを綿密に計算しましょう。

2. 原価率が高すぎて利益が出ない

来客数も多く、売上高が確保できても、原価率が高すぎることによって利益が出ない場合があります。

一般的に飲食業の原価率は30%と言われています。しかしこれは、一律で30%という意味ではありません。

集客目的のフロントエンド商品と、利益を出すことが目的のバックエンド商品など、バラツキは生じます。それらを踏まえて計算を行い、利益が確保できる原価率に調節することが重要です。

3. 立地が悪く客入りが悪い

開業する立地が悪いがために、経営に失敗してしまったケースも多いです。しかし、一等地に店を構えるということではありません。

地域には必ず、客相の傾向があります。具体的には「ビジネスマンが多い地域」「学生が多い地域」などです。その客相に合ったメニューを提供していなければ、来客数は増えません。

反対に言えば、コンセプトに合った立地に店を構えることが重要なのです。

4. ニーズに応えられていない

売上が立たない大きな理由に「消費者のニーズに応えられていない」ことが挙げられます。

消費者は、自身の求めている商品ではないと判断されたら、他のニーズにマッチするお店へ流れてしまうのです。

確かに、自分の拘りを出せることは居酒屋経営の魅力の1つです。しかし消費者あっての商売であることには間違いありません。

そのため、自身のサービスと消費者のニーズにマッチしているかどうかは必ず確認しましょう。

5. 最初から大規模な投資をしている

上記での開設した通り、居酒屋経営の成功率は決して高くありません。そのため、最初は小規模な投資でスタートすることが重要です。

もし、最初から大規模な投資をしてスタートしたにも関わらず、事業に失敗してしまった場合、多額の借入金のみが残る場合があります。

そのため、経営が軌道に乗ったら徐々に規模を大きくしていくことをおすすめします。

そうすることによって、万が一失敗した場合であっても、少ない損失で済みます。つまり、次に向けてリスタートがしやすくなるのです。

居酒屋の開業資金・費用の目安

居酒屋の開業資金は事業の規模によって大きく異なります。ここでは、1人で居酒屋を開業する場合の目安をご紹介します。

開業資金費用の目安
物件取得費150〜250万円
内・外装工事費200〜500万円
設備費50〜150万円
備品費30〜50万円
広告宣伝費0〜50万円
当面の運転資金100〜200万円
合計530〜1,100万円程度

これらは10坪(20席程度)の居酒屋を目安としています。

物件取得費は保証金や敷金・礼金など、家賃の12ヵ月分程度を目安としましょう。

内・外装工事費は、依頼をすると1坪あたり約20~50万円かかると考えましょう。設備等は厨房設備などを指し、備品等は椅子や机などです。

広告宣伝費はSNS等のインターネットを有効に活用すれば、費用はかかりませんが、グルメサイト等に掲載などをすると、費用が発生します。

また、当面の運転資金は100~200万円程度と記載しましたが、場合によって更に準備しても構いません。当面の運転資金が多いということは、赤字の期間が長くても事業を存続させることができるためです。

居酒屋の開業資金を抑える4つの方法

上記で解説した開業資金は530万円~1,100万円と大きく幅があります。それでは、開業費用を少しでも抑えるにはどうしたら良いでしょうか。

本項では開業資金を抑える方法として下記4点を解説します。

・居抜き物件で開業する
・内装をDIYする
・宣伝はSNSを活用する
・リース・中古商品を活用する

1. 居抜き物件で開業する

居抜き物件とは、前のテナントの設備がそのまま残っている物件のことです。居抜き物件を選択することによって、設備費等の負担が大きく軽くなります。

2. 内装をDIYする

内・外装工事を業者に依頼すると、1坪あたり20~50万円かかります。一方で、自身でDIYをすると、数千円で済む可能性もあるのです。

未経験の方は苦労しますが、初期費用を浮かせるために検討すると良いでしょう。

3. 宣伝はSNSを活用する

宣伝としてグルメサイトなどを活用するのであれば、最低でも数万円かかります。

一方でSNSなどを用いて自身で宣伝を行えば、無料で宣伝をすることができます。また、SNSには、情報の更新や変更を小まめに行うことができるというメリットもあります。

4. リース・中古商品を活用する

備品へかける費用を抑えるには、中古商品の使用もしくはリースの活用が有効です。特にリースの場合は、毎月の費用は発生するものの、開業費用は大きく抑えることができます。

居酒屋を開業に必要な資格

「居酒屋の開業には資格がいる?」と不安な方もいるでしょう。居酒屋の開業において必須な資格は、以下の2個に限られます。

・食品衛生責任者
・防火管理者

食品衛生責任者

食品衛生責任者は居酒屋を開業する上で必須の資格となっています。

飲食店を経営するのであれば、食品衛生責任者を店舗に1人置くことが義務付けられているためです。

しかし、こちらは単日の講習のみで取得が可能なため、特別な対策をする必要はありません。

防火管理者

居酒屋の収容人数が30人以上となる場合、防火管理者の資格も必要となります。

防火管理者にも区分分けがされており、延床面積が300平米以上の場合は甲種、延床面積が300平米未満の場合は乙種の資格が必要となります。

いずれも1~2日の講習で取得可能なため、特別な対策等は不要です。

居酒屋を開業する際に必要な届出や申請

実際に居酒屋を開業する際は、様々な機関において申請手続きが必要となっています。ここでは、赴く必要がある機関ごとに必要な手続きを解説します。

以下4機関の手続きをそれぞれ見ていきましょう。

・税務署
・保健所
・消防署
・警察署

税務署への手続き

税務署への提出が義務付けられている届出は「個人事業の開廃業届出書(開業届)」です。

この際に、青色申告承認申請書や、給与支払事務所の開設届出書など、自身の状況に合った届出を提出しましょう。

注意が必要な点は、自身の納税地と管轄の税務署についてです。

原則として納税地は、自身の住民票の住所です。店舗の住所に変更する際は「納税地の変更に関する届出書」の提出が必要になります。

そのため、開業時の書類の提出先は、住民票の住所を管轄する税務署となるため注意しましょう。

保健所への手続き

飲食店を開設する際は、保健所に対して食品営業許可申請を行う必要があります。

この申請を許可を得るには、設備面や内装などの細かい要件をクリアする必要があるため、余裕を持って申請を行いましょう。

消防署への手続き

火を扱う居酒屋である場合、消防署に対して以下の届出が必要となります。

・火を使用する設備等の設置届出書
・防火対象設備使用開始届
・防火管理者選任届

なお、防火管理者選任届については、収容人数が30人以上の場合にのみ必要となります。

警察署への手続き

中には深夜遅くまで営業し続ける予定の人もいるでしょう。

お店を深夜0時以降まで開店し続ける場合、警察署に対して「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書」の提出が必要になります。

居酒屋 3つの開業形態

一概に居酒屋を開業と言っても、様々な開業形態があります。それぞれにメリットとデメリットが存在するため、自身に合った開業形態を選択しましょう。

本項では、下記3つの開業形態を解説します。

・個人経営
・フランチャイズで開業する
・週末起業で居酒屋を経営する

1. 個人経営

個人経営で居酒屋を経営する特徴として、自身の拘りを出せるという点があります。コンセプトから物件まで、自分の力で決定し、自分が思い描く居酒屋像を実現しやすい点が魅力です。

また、コンサルタント料やフランチャイズ契約(後述)に係る費用も発生しないため、毎月の固定費も抑えることができます。

しかし、誰の力も借りずに経営を行うということは、全範囲の知識を身に付ける必要があるということです。

居酒屋の経営以外にも、税務や法律の知識も必須となります。そのため、多くの時間を開業準備に隔てる必要があるため注意が必要です。

もちろん、個人経営を行いながら、経営の手助けを受けるという意味で、顧問税理士や、コンサルタントに相談するという選択肢も大変有効です。

2. フランチャイズで開業する

フランチャイズとは、既に展開している居酒屋の看板を借りて営業を行う形態です。

既に何店舗も展開している居酒屋の経営ノウハウが学べるというメリットがあります。人材育成や経営システムにおいて、既にマニュアルがあるため、経営を行いながら知識を身に付けることが可能です。

また、一定のネームバリューがある状態から経営をスタートできるため、集客もしやすいという特徴もあります。

一方で、メニューやターゲットは既に本部が決定しているため、自身の拘りを出すことはできません。また、加盟料やロイヤリティも発生するため、売上を上げやすい分、費用も掛かるというデメリットがあります。

3. 週末起業で居酒屋を経営する

いきなり独立するのに不安が残る人は、週末起業という選択肢もあります。

週末起業のメリットとして、会社員を辞める必要がないという点があります。もし居酒屋の経営で失敗したとしても、会社員としての収入があるため、有効なリスクヘッジとなります。

一方で、開業や経営に割ける時間が圧倒的に少ないという点がデメリットです。また、平日は会社員、休日は事業主としての生活となるため、身体的負担も大きいです。

このようなデメリットに納得できるのであれば、最初は週末起業で、軌道に乗ったら独立するという選択肢も大変有効です。

まとめ

成功率が40%とも言われている居酒屋の開業においては事前の準備と、失敗の傾向の理解が非常に大切です。

コンセプトや店舗、メニューの決定の時点で競合他社と差別化ができれば大きなアドバンテージになります。また、他の人が失敗する部分を乗り切ることができたら、事業の継続確率も向上します。

当記事では、居酒屋を開業するための6つの準備や失敗例の解説、必要な開業手続きなどを解説しました。

居酒屋の起業は決して簡単ではありませんが、数多くの魅力も秘めています。この記事を参考に、居酒屋の開業を現実的にしてみてはいかがでしょうか。