原価率とは?計算方法や飲食店などでの活用方法を解説!

原価率を理解することで適切に事業の意思決定・分析ができるようになります。

「売上が多ければ原価は気にしなくてもいいのでは?」と考える人もいますが、それは大きな間違いです。なぜなら、最終的な利益は、売上高から原価などの費用を引いて計算するためです。どれだけ売上高が伸びても費用がかさめば利益が少ないのです。

そこで本記事では原価率の計算方法や意味、目安や活用方法を紹介します。

この記事の監修者
金子 賢司
CFP ®資格保有
ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
目次

原価率とは?意味と計算方法をわかりやすく解説

原価率とは売上高に占める原価の割合です。売上高が伸びても原価が高ければ利益には繋がりません。適切な原価率で経営を行うことが事業を存続させるために重要です。

原価とは?

原価は商品の生産費用です。例を挙げると「小売業における仕入額」や「飲食業における原材料費」などです。一方で、家賃や広告費は原価に含まれません。これらは販売費や一般管理費といった別の区分の費用です。

原価率は原価を売上高で割ることによって求めることができます。

原価率=原価÷売上高

原価率の計算例

「売上高=1,500,000円」「原価=450,000」の場合の原価率は以下の通りです。

原価率=原価÷売上高=450,000÷1,500,000=0.3(30%)

上記から「売上高150万円のうち30%が原価。売上高の70%が粗利(売上高-原価)」ということが分かります。

歩留まりとは?

歩留まりとは、製造した商品のうち良品が占める割合・原料のうち使用した割合を指します。

歩留まり=良品の数(使用した原材料)÷全ての製造数(全ての原材料)

例えば「1,000gのキャベツを購入したが、実際に使用する部分は800gで、200gは処分した」時の歩留まりは以下の通りです。

歩留まり=800÷1,000=0.8(80%)

原価率を正しく把握するためには、歩留まりを考慮することが重要です。

FLコストとは?

FLコストとは原価(Food)と人件費(Labor)の合計額です。

FLコスト=原価+人件費

飲食店の費用はFLコストが大部分を占めます。どれだけ原価を抑えて粗利(売上高-売上原価)を確保してもFLコストが大きくては利益は少なくなります。

ちなみに売上高に対するFLコストの比率を「FL比率」と言います。

FL比率=FLコスト÷売上高

原価率が重要な理由

原価率は経営上、重要な指標です。なぜなら原価率が低ければ利益率が高くなりやすいからです。

「利益率」とは売上高に占める利益の割合です。利益は売上高から諸費用を差し引いて求められます。つまり売上高よりも、売上高から原価を差し引いた「粗利(売上総利益)」の方が最終的な利益の目安となるのです。

そして原価率を抑えるほど粗利の割合(粗利率)が増加します

例えば、価格が1,000円、原価が400円(原価率=40%)の場合の粗利は600円です。この場合において、原価を300円(原価率30%)に抑えたら、粗利は700円に増加します。

このように、原価率は利益に直結するため、非常な重要な指数となります。

飲食店の原価率の目安は30%

飲食店での原価率の目安は30%です。ただし飲食業の種類によって原価率は大きく異なります。

例えば、カフェなどのドリンクが中心となるお店の場合、原価率が低い傾向があります。他にも、扱う食材によっても原価率は大きく変わります。例えば、パスタの原価率は10%台です。一方で、仕入れ原価が高い大トロなどは原価率が60%を超えることもあります。

飲食店の原価率計算は複雑です。そのため本項では、より正確に飲食店での原価率計算ができるようになるためのポイントを解説します。

原価率は事業規模ごとに異なる

事業規模によって原価率の目安は異なります。例えば、個人経営なら人件費が抑えられるため、原価率が10%程増加しても事業の存続が可能です。一方で大手チェーン店は、目安より少ない25%程度の原価率が多いです。

月々の原価率は「先入先出法」で求める

商品ごとの原価率は「原価÷売上高」で求めることができます。しかし、月ベースの原価率を求めるためにはこれでは不十分です。前月に購入した食材を翌月に持ち越すこともあるためです。

そこで、食材の繰越しを含めて、正しい原価率を算出できる先入先出法を採用しましょう。先入先出法は、先に仕入れたものが先に使用されると仮定し、取得原価を払い出し原価に分配する方法です。

原価=前月繰越し+仕入-翌月繰越

翌月繰越とは、当月に仕入れたが使用しなかった食材です。例えば「調味料をまとめて仕入れて、数か月にかけて使用する」などのケースが該当します。まとめて仕入れた食品を当月の原価にすると、原価率が高い月が発生します。

原価率は付加価値で下げられる

粗利(売上高-原価)はその商品の付加価値を表します。例えば原価300円の商品を1,000円で提供している場合、付加価値は700円です。付加価値とは商品の本体以外の価値です。

付加価値の例として、サービスの良さやお店の雰囲気などが挙げられます。同じ料理なら価格が安い方を購入するでしょう。他社が自社よりも高い価格で提供しているということは、自社にない付加価値も提供しているということです。

原価率は全商品一律ではない

飲食業の原価率目安は30%程度ですが、全商品の原価率を一律に30%にはしません。

原価率が高いが集客力のある商品や原価率が低く利益を出す商品など、全商品の原価率を平均化すると30%となるのです。

そのため、各商品ごとに食材の原価を把握しましょう。下記にて、正確に食材の原価を把握する方法を解説します。

歩留まりを計算に入れる

歩留まりを計算に入れることで正しい原価率を計算できます。

仮に「キャベツ1,000gを100円で仕入れており、芯部分など200gは使用せずに捨てる」とします。この場合、実際に使用する量は800gです。100gあたりの原価は10円と考えると誤りです。

歩留まりを考慮して可食部分800gのキャベツを100円で仕入れたと考えましょう。この場合、100gあたり原価12.5円です。((100÷800)×100)

歩留まりを考慮しなければ、原価率が低く算出されます。そうなると思ったより利益が出ていないという事態になり得ます。

レシピ上で原価を管理する

原価率を計算する際、1つの食材しか使用しないのならば、値段と使用割合の計算で済みます。しかし、複数の食材を使用する料理がほとんどです。

その場合にはレシピを活用します。レシピには使用する食材とその分量を明確に記載します。それぞれの分量が分かれば、1つ1つの原価を合算して正確な原価が計算できます。

業種別売上原価率の目安一覧

下記は業種別の原価率目安です。ただし同業界でも実態によって原価は異なります。下記は1つの目安として、実情にあった原価率に調整しましょう。

業種原価率の目安
飲食業約30%
宿泊業約30%
小売業約70%
卸売業約85%
建設業約90%
製造業約80%

原価率が高くても利益は出る

基本的には原価率が低い方が粗利率は高くなります。しかし原価率が高いからと言って利益が出ないということはありません。ここでは、原価率が高い状態で利益を出すためのポイントとして4点を解説します。

営業利益に注目する

最終的な利益は売上高から全費用を引いて決定します。事業は原価以外に様々な費用が発生するため、原価を抑えても他の費用がかさんでは利益が出ません。むしろ原価がかさんでも、全費用が売上高より少なければ利益が出るということです。

このため、粗利から諸経費(販売費及び一般管理費)を差し引いた「営業利益」ベースで利益率を考えることが重要です。

原価率が高くても販売数を増やせば利益が出る

原価率が高くなる理由の1つは他社より価格が低いことです。原価が同じで価格を落とすと、原価率は高くなります。

しかし、低価格は差別化要因にもなります。安いことで販売個数の増加が望めます。薄利多売なら原価率が高くても利益を出すことが可能です。

目玉商品は原価率が高くても提供し続ける

飲食店には目玉商品が設定されていることも多いですが、目玉商品は原価率が高い傾向にあります。原価率が高い商品はお客さんにとってコストパフォーマンスが高い商品であり、それを目的に来客する人が増えます。

この集客目的の商品をフロントエンド商品と言います。フロントエンド商品で集客を試みて、利益率が高い商品(バックエンド商品)で収益を得るという戦略を用いる事業者は多いです。高い集客性を誇る商品であれば、多少原価率が高くても提供し続けるべきと言えます。

原価率を下げると品質も下がる

原価率を下げた結果、品質も落としてしまう場合があります。原価率が下がれば粗利率は増加しますが、消費者の不満に繋がる可能性があります。その結果、顧客離れに繋がり、売上高が減少する可能性もあるため注意が必要です。

原価率 3つの活用方法

原価率を正しく理解すると、適切に経営判断ができるようになります。そのため、原価率を活用する術を知っておくことは事業運営のために必須だと言えるのです。ここでは原価率の活用方法を3つ紹介します。

販売価格の妥当性を確認する

原価率から販売価格の妥当性が判断できます。例えば、原価率が80%だとその商品での収益は見込めません。もし収益を得る目的で提供している場合、販売価格が低すぎる可能性があります。それでも価格を上げることができない場合は、撤退するべき商品と言えるでしょう。

一方で原価率が10%と低い場合、価格設定が高い可能性があります。その価格に見合う付加価値を提供できているかどうか確認しましょう。

収益性を確認する

原価率が30%なら粗利は70%です。粗利は収益性の目安となります。粗利から最終的な利益は断定できませんが、どれくらいの収益となるかの指標となる数値です。粗利率を原価率から算出して事業に役立てましょう。

商品ごとの原価率を比較する

全体の原価率を知ることも大切ですが、商品ごとの原価率を比較することも重要です。原価率を比較することによって、商品の拡大・撤退の判断や、改善の必要性などを比較検討できます。

原価率を確認すべき4つのタイミング

原価率の見直しは定期的に行うべきです。なぜなら、仕入価格の変更やレシピの分量変更など、原価率の変動要因があるためです。ここでは原価率を確認するべきタイミングとして4つを紹介します。

価格の設定時

商品を開発して価格を設定するタイミングでの原価率の確認は必須です。ここで適切な提供価格か判断しましょう。

仕入価格の変動時

原材料の高騰などによって、大きく仕入値が変わる場合があります。原価率に影響することがあるため、仕入価格が変わったら確認を行いましょう。

月の利益の確認時

多くの飲食店では、月末に1ヵ月間の粗利見込み額を確認します。そのタイミングで原価率が適正かを確認しましょう。売上に対して粗利が極端に出ていない商品などは注意が必要です。また、導入したばかりのメニューは原価率が想定とは異なることもあります。それらを確認するためにも、毎月原価率を確認しましょう。

各週での売上分析時

各週の売上を集計する際、一緒に原価率の確認も行いましょう。小まめに確認を行うことで異変が起きたら直ちに対応が可能となります。また、発注ミス等が原因で原価率が圧迫された時に注意喚起として従業員と共有をすれば、余計なロスを防ぐことができます。

原価率を下げる6つのポイント

原価率の高低が事業の優劣の指標になるとは限りません。しかし原価率が高すぎると利益が減少することも事実です。そのため、原価率を下げるための手段を身に付け経営に役立てましょう。本項では原価率を下げるためのポイントとして6つを紹介します。

オーバーポーションをしない

「オーバーポーション」とは、レシピ以上の分量を使用することです。オーバーポーションをすることで使用食材が増え、原価率が上がってしまいます。レシピには分量を明確に記載し、それを厳守することが大切です。

業務の効率化

原価率を下げるには業務を効率化することも重要です。発注・調理でミスをすると食材が無駄になってしまうためです。オーダーの方法を改善する、調理工程をマニュアル化するなど、少しでもロスを減らせる環境を作りましょう。

在庫を抱えすぎない

無駄なく事業を行うために、在庫管理が重要です。在庫を抱えすぎると消費期限が経過して廃棄となる可能性があります。一方で在庫がない状態になると商品が作れません。どの程度の在庫が必要かを想定して発注を行いましょう。

コンセプトの見直し

お店のコンセプトを見直すことが、原価率を抑えることに繋がることもあります。専門店化が好例です。専門店化することでメニューが絞られ、廃棄食材が減少し、原価率の低下に繋がるのです。

商品単価を上げる

商品単価を上げることによって原価率は下がります。しかし、より安い商品がある他社に顧客が流れるリスクもあるため、価格の調整は慎重に行いましょう。

仕入原価を下げる

原材料を安く仕入れることができれば、原価率は下がります。手法として仕入先の見直しや価格交渉などが挙げられます。しかし低品質の原材料を使用して商品の質を下げると顧客離れに繋がる可能性もあるため注意しましょう。

ロス率とは?

原価率の概念の中で「ロス」という言葉が出てきます。ロスとは、原価のうち売上高に繋がらなかった金額を指します。

● ロスの合計値=ロス高
● ロス高を売上高で割った値=ロス率

ロスがあれば無駄な出費があるということです。浪費しないためにロスは抑えましょう。本項では飲食店の経営者が理解しておきたいロスについて2点を解説します。

飲食店でよくある3つのロス

飲食店におけるロスの発生には以下のケースがあります。このようなロスはなくしましょう。

  • 誤発注の商品を廃棄
  • 過剰に仕入れて廃棄
  • 仕込みが多すぎて廃棄

飲食店のロス率の目安=5%

飲食店のロス率の目安は5%です。ただし無駄でないロスもあります。例えば、人材育成のために食材を使い、提供まで至らなかったという例です。これもロスですが、スタッフ教育に欠かせないものです。

原価率のエクセルを用いた出し方

原価率の有効な活用方法として、商品ごとに原価率を比較する手法があります。ここではエクセル上で、複数の商品の原価率や粗利の出し方を解説するため参考にしてください。

基本的には下記の流れに従い、エクセルを用いて原価率を計算することができます。

1.基本となる表を作成する
2.各商品の売上高・原価を入力する
3.原価率を算出する
4.粗利率を算出する

 1.基本となる表を作成する

ベースの表を作成し、各商品の名称・売上高・原価を入力しましょう。今回の例では商品の数が3種類と仮定します。商品が4種類以上ある場合は、それに合わせて行を増やします。

原価率 基本となる表を作成する

こちらの表は1度作成すれば何度も使用できるため、別途保存しましょう。

 2.各商品の売上高・原価を入力する

次に、各商品の売上高・原価を入力します。原価欄は、使用した材料を合計した金額を入力してください。今回の例では以下のような売上高及び原価と仮定します。

原価率 各商品の売上高・原価を入力する

 3.原価率を算出する

次に原価率の算出に入ります。原価率の求め方は「原価÷売上高です。また今回は%表示のため100を掛けます。従って商品Aの原価率のセルには「=(C3/B3)*100」と入力します。(「÷」=「/」,「×」=「*」)

原価率 原価率を算出する

これで商品Aの原価率が算出されます。

原価率 原価率を算出する

続いて商品B,Cの原価率も計算します。セルに入力しても求められますが、エクセルを使っているので手間を省きましょう。

セルD3の右下にマウスを合わせてセルD5までドラッグします。

原価率 原価率を算出する

商品B,Cの原価率が自動で算出されました。

最後に上部のツールバーで小数点を第一位に揃えて、原価率の算出が完了です。(詳しい操作は最後に動画で解説します。)

原価率 原価率を算出する

 4.粗利率を算出する

次に各商品の粗利を求めます。粗利の求め方は「売上高-原価」です。商品Aの粗利額セルには「=B3-C3」と入力します。

原価率 粗利率を算出する

商品Aの粗利額が1,757,100円と求まりました。

原価率 原価率 粗利率を算出する

次に、先ほどと同様に、セルE2の右下をセルE5へドラッグし、商品B,Cの粗利額を算出します。

原価率 原価率 粗利率を算出する

これで、商品B,Cにおける粗利額が算出されました。

最後に、上部のツールバーを用いて数字をカンマで区切ります。

原価率 原価率 粗利率を算出する

これで、原価率及び粗利額の表が完成しました。

参考 この表から判断できること

原価率及び粗利額の算出が終わったこの表からは、様々な分析が可能です。

商品Aはフロントエンド商品になり得る

まず商品Aに着目します。商品は原価率が51.9%と非常に高いです。飲食店での原価率の目安が30%のため大幅にオーバーしています。

しかし大きな売上高を記録していることも分かります。売上高の多くを担う人気商品なのです。よって、原価率が高くても、フロントエンド商品として貢献している可能性が高いです。

商品Bはバックエンド商品になり得る

次に商品Bを見てみましょう。商品は原価率が非常に低いことが分かります。商品Aの半分程度の売上にも関わらず、同等レベルの粗利額を記録しています。

つまりバックエンド商品の役割を担っているのです。利益を得る上で非常に重要な商品と言えるでしょう。

商品Cは見直しが必要

一方で商品Cは、売上高が少ないにも関わらず、原価率が約5割となっています。粗利額も他の2商品と比較して非常に少ないです。この商品は見直しが必要な可能性があります。まずは原価を抑えることから検討しましょう。

このように、原価率と粗利額を表にまとめるだけで多くの分析が可能となります。手間もそれほどかからないため、是非活用してください。

原価率と粗利額の出し方を動画で確認しよう

最後に原価率と粗利額の出し方を動画で紹介します。画像にはなかった細かい動作を確認しましょう。手順2が完了した段階からの動画となっています。

まとめ

原価率を正しく理解することによって、事業の意思決定や、経営分析に大きく役立ちます。具体的には以下のことが可能となるのです。

・適切な販売価格の設定
・収益性の確認
・商品の拡大もしくは撤退の判断

当記事では、原価率の概要から、計算方法、活用方法などを詳しく解説しています。また、エクセル上での原価率の出し方も画像、動画付きで解説したため、是非参考にしてください。

CFP ®資格保有者 金子 賢司(かねこ けんじ)さんからのコメント
原価率は全商品が一律でに低ければいいというものではありません。
スーパーの売り場などが、棚の下段で特売の商品を大量陳列して薄利で販売して売上をつくり、棚の中段より上の商品も合わせて購入してもらうことで利益を確保しているというように、売上や利益は売り場や部門トータルで作り上げていくものです。各商品の売り場における役割を決めたら、各商品の原価率や粗利が想定通りになっているか定期的にチェックをしていきましょう。想定通りになっていなければ、現場担当者協力して、対策、改善のサイクルを継続していくことが大切です。